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二種類の海人族系統(宮本常一 メモ)

 『なつかしい話 歴史と風土の民俗学』宮本常一 河出書房新社(2007年)において、和歌森太郎氏と対談した「倭人たちの海」は大変面白くメモを残す。

 日本列島が周囲海で囲まれるようになったのは1万年前の頃のようだ。そこには縄文人が住んでいたという。そして、海の彼方から稲作と鉄を携えた弥生人が何波にも渡り到来し日本列島には狩猟・漁労に加え稲作農耕が始まったと考えられている。

 この渡来系の海人には2種類存在したのではないかと民俗学の立場で述べている。一つは赤道近くの南の島々から琉球を経由し南九州から西九州に到来した人々と、もう一つは長江下流域から東シナ海沿岸、山東半島から西南韓半島に海を生活の場として活躍していた人々の到来である。この人々は、中国の春秋戦国時代の混乱で逃れてきたものと推測される。

 1.宗像系統の海人

 住吉神社に祀られている、上筒之男(うわつつのお)・中筒之男(なかつつのお)・底筒之男(そこつつのお)潜水海女の源流 

 (船の建造技術)

 筏船、丸太を繋ぐ楔、船梁(ふなばり)、船底が平、中国沿岸から朝鮮半島西南部から列島へ、上が広く船住居(ふなずまい)が可能

 漁労は潜水漁法・網漁法

 福岡県 鐘ヶ崎(おきのしま) 大陸→朝鮮半島→おきのしま→鐘ヶ崎

 遠洋漁業が盛んになる前は男も女と一緒に潜水し潜水漁業をおこなっていた 江戸時代に鯨漁が盛んになると、男は刃刺(はざし)=鯨を攻撃する漁師となり女は船を降り沿岸で潜水漁法 家船(えふね)習俗の解体 志摩の海女も鯨漁が始まる前は男も潜水 しかし男は熊野の鯨漁へ

 宗像海人集団が瀬戸内海に最初に築いた拠点は厳島 厳島神社の祭神に宗像の3女神の一人、市寸島比売命(いちきしまひめのみこと)を祀る

 次に東に展開し広島の能地(のうじ)(鐘ヶ崎の地名が残る)能地を親村として同じような漁村を瀬戸内海に点在させたがこれを枝村と呼ぶ(100以上に達する)

 海上漂泊民(家船=えぶね)の民は対島から五島列島にかけての海と瀬戸内海だった 広島県三原市能地と竹原市の二窓(ふたまど)が家船の拠点

 2.阿曇系の海人

 ワダツミ系の海人

 銛(モリ)やヤスによる突漁を中心 薩南諸島・五島列島にかけた九州西南海の島々 隼人を含む (金印の志賀島も)

 (船の建造技術)

 伝馬船(てんません)技法 竜骨に似た狭い敷き板を船底に持つ船

 鹿児島から南方の島々に残る 沖縄のサバニ(小船)のように底が尖っている 南方の島々のカヌーと同じ様式

 南方の赤道を越えた島々、沖縄糸満、瀬戸内海の伊予の島々、村上水軍は速度の速い船と銛やヤスを使い漁をする男が戦闘に応用する

 種子島では鉾突き漁

 瀬戸内海の大三島(おおみしま)の大山祇神社(おおやまつみ)南九州に降臨したニニギノミコトに娘を提供

 大三島には宗像系の漁民も居住していた(宗方 むなかた)という地名が残る

 『日本書紀』 応神天皇3年に東蝦夷(あずまえびす)は王権の傘下に入るが、いくつかの海人が服さないので阿曇連の祖である大浜宿禰(おおはまのすくね)を派遣し服さない海人を成敗し彼を海人の頭(かしら)とした

 『日本書紀」 履中天皇元年に阿曇連浜子(あずみのむらじ はまこ)が仲皇子(なかつみこ)と共謀し反逆罪を侵し、死一等を免じ墨刑にしたという記事がある 顔に刺青をした人を『阿曇目』と当時の人は呼んだ

 これは、本当は刑罰ではなく阿曇の海人たちは顔に刺青をする習俗が存在していた事を指す 目の周辺に刺青をした

 『古事記』の記事 応神天皇が大山守命(おおやまもりのみこと)は山海の政治を行い、大雀命(仁徳さん)は食国(をすくに)の政治を行い、宇遅能和紀郎子(うじのわきいらっこ)は天つ日継(ひつぎ)をしらしめと述べたという。ヤマト王権にとり山と海は支配外に存在した証拠ではないか。

 3.山人(縄文系の人々)が海に進出し新漁法を発明した

      網の発明は山人が最初ではないか(仮説) 宮本常一さん

 夜、鳥の目が見えなくなった時に網で鳥を捕獲した→山人が海で網で魚を獲る方法に応用した

 ・筌(うけ)、魞(えり)、タコつぼ、等々は山人の発明ではないか(仮説) 宮本常一さん

  縄文時代からの落とし穴の発想→穴の底に幾本かの棒を設置、獣が落下すると棒の上で足が使えない、移動不可→筌を発明、琵琶湖の魞も同じ筌の変形としてタコつぼが存在する

 ・賀茂氏も阿曇氏も山から海に進出した氏族である可能性も考えられる(仮説) 宮本常一さん

                

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