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古代日本列島人の蛇信仰について その1 序

古代の日本列島歴史を考えるには考古学によるアプローチと文献史学によるアプローチがあります。しかし、古代の人々の精神世界を復元するには民俗学というアプローチが必要になると考えるようになりました。卑弥呼の鬼道とは何だったのか、その痕跡は我々の精神世界に残されていないかを追跡しなければ、豊かな古代史の復元は出来ない。

 最近、民俗学者の谷川健一氏の『古代海人の世界』(小学館)を読む機会がありましたので、特に古代人の蛇信仰についてメモを残したいと思います。勿論、三輪山の大物主の正体である蛇に関しても触れたいと思います。考えてみると、大物主という名前に主(ぬし)という言葉が含まれていますね、ヌシというのは蛇の事である事を忘れていました。

 (アマベの民の分類)

 海辺で暮らす人々を分類すると①海に背を向けて農耕をする人々。②浜辺で潜って魚介類を採取する人々。③家船(えぶね)のように海上で生活する漂海民。④魚を獲らない航海に従事する人々。海に背を向けて農耕する人々も出自を異にする渡来の海民がいたのではないかと考えられる。

 私の父の実家は佐賀県唐津で江戸時代から海外貿易を生業としていた一族であったようです。分類でいうと④の海の民と言う事が出来ます。実家の裏まで貿易船が停泊できる家だったようで、唐津では有名な貿易商だったと、父の家で育てられた書生さん(書生さん達は東京帝大に留学が許された)が話をされていました。江戸時代は鎖国時代と言いますが、九州ではそんな法律は通用しなかったのでしょうね。明治維新が出来たのは西国の雄藩が密貿易で財を蓄えていたからだという説もあります。

 父は家業を継がず、家の財産も継がず、独立して関西方面で一般庶民と同じ公務員の仕事を最後まで続けました。ですから、貧乏な家でした。

 そんな訳で、子供の頃から自分の親爺の名前が気になり、筒(ツツ)に関する列島での歴史に興味がありました。次回の記事では、私の父の先祖であろう筒(ツツ)族に関する民俗学の分野からの歴史分析について『古代海人の世界』からその内容を御紹介したいと思います。民俗学の分野ではかなり詳しく今迄に研究されているのには驚きました。

 

 (色んな蛇の神様)

 谷川氏の掲記本の序より蛇の神様に関する興味ある部分を御紹介しておきます。

 蛇を意味する言葉には色々とあるようです。先ほど述べた、主(ヌシ)という言葉があるが、これは虹(ニジ)と同系統の語であるらしい。虹は古代中国では蛇を意味する言葉だったそうだ。宮古島でも天空にかかるニジを天の蛇(ティンパヴ)と今でも呼ぶらしい。

 列島の南の島である奄美から与那国島、波照間島まで海底の長い生物である海蛇、ウナギ、アナゴ、ウツボ、ハモなどを総称してウジ(ウズ)と呼ぶそうだ。この語もニジに由来する語であると谷川氏は考えておられるようです。ウジ(ウズ)は天の蛇であるニジと呼応する海底の霊怪であるという。

 そして、蛇を意味する言葉にツツがあるといいます。谷川氏の話では肌に蛇(ツツ)の文様を入墨し、海中深く潜っている人々は「倭の水人」であり、彼らの目の前を毬のように絡み、もつれるエラブウミヘビ、鋭い歯を見せるウツボ、身を波打たせ去る大ウナギ、彼らはこれを『可畏(かしこ)きもの』と崇める一方、自分たちの先祖であると考え親愛なるまなざしを送ったと説明されています。

 太陽の光線が僅かしか届かない海底で、海蛇の類が怪しげに乱舞する光景は、古代海民の深層意識の世界であったと考える。

 (閑話休題)

 私の先祖の名前が蛇であった事に驚きですが、ウジという語も蛇であった事に驚きですね。菟道稚郎子(うじのわけいらっこ)の菟道の名前は現在、宇治市の名前でもあります。昔から宇治という言葉は何処から来たのだろうか疑問でした。これが海底の霊怪を意味する言葉であるとは驚きですね。考えてみると、宇治は日本海から琵琶湖を経由し淀川を経由して難波津に出るルート、及び木津川経由で奈良盆地に出る海運の要の地でした。

 現在で言う海運業者・総合商社にあたる息長氏や和邇氏が海の民である可能性が高いと考えると、ウジという名前がこの場所に付けられた背景が理解出来ない訳ではない。

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