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秦氏に関するメモ その4 ヤハタ(八幡神)の神

承前 秦氏に関するメモ その3

(香春神社の祭神がオキナガタラシヒメに変更された理由)

大和岩男氏の説では、本来は加羅の神を祀っていた香春神社は大和政権の政策により8世紀以降、国家鎮護の神となり祭神名が神功皇后と息子の応神天皇に変わったという。

それにも理由があるという。『古事記』によればオキナガタラシヒメの母方の始祖は、新羅の王子であるアメノヒボコであり、新羅王の血を引くという事になる。  『豊前國風土記』が記録する新羅の神を祭るという香春神社とここで整合がとれる事になります。

 平野邦雄氏の説では『播磨風土記』に記録するアメノヒボコ説話を持つ地域と秦氏の居住区が完全に重複するという。喜田貞吉氏はアメノヒボコが秦氏族の最初の日本移住者であろうと指摘している。  

三品彰英氏もアメノヒボコ→オキナガタラシヒメの系譜が必然的であると述べる。

  『日本書紀』垂仁天皇3年3月条   

アメノヒボコ、菟道(うじ)河より泝(さかのぼ)りて、北のかた、近江國吾名邑(あなむら)に入りて、暫く住む。・・・・云々・・・・・是を以って、近江國の鏡村の谷の陶人(すえびと)は、アメノヒボコの従人なり。

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現在この場所の候補は蒲生郡竜王町や草津町穴村町がある。三品氏は『和名抄』にみえる坂田郡阿那郷を推測している。

蒲生は家内の母方の故郷であり個人的にも興味のある場所です。

 (八幡神 ヤハタの謎)

 私は子供の頃から地元の石清水八幡宮の近くの木津川で夏は泳いでいたのですが、京阪電車の駅名に八幡駅がありヤハタと呼んでいました。地元ではハチマンではなくヤハタと発音しています。これが八幡を古代からヤハタと発音しておりこれが重要です。

 貞観元年(859年)に山城の國に石清水八幡宮が勧請されてから、本家の八幡宮は宇佐八幡宮と呼ばれるようになったそうだ。要は、八幡宮と言えば豊前の国の宇佐八幡宮を無条件に示していた。宇佐八幡と呼ばれるのは、石清水八幡が出来た後なんですね。そこで、謎が生まれるのだ。

 古来、伊勢神、出雲神、諏訪神と地名をつけて呼ばれるのが日本の神社の常である、であるとすれば八幡宮(ヤハタの神)のヤハタは地名でなければならない。しかし、宇佐郡にヤハタの地名は存在しない。

 大和岩雄氏の意見をまとめると、以下のようになります。

 (神功皇后紀より)

 九州遠征のとき、神功皇后は自ら神主となり、武内宿禰に琴を弾かせ、琴の前と後ろに「千幡高幡(ちはたたかはた)」を置いて、降神儀礼を行ったという記述がある。この意味は数多くのハタ(千ハタ)を、高々と掲げた(高ハタ)様子であり、コト(琴)は出雲神話の『天海詔琴(あまののりこと)』の名にある降神楽器である。降神の標識(よりしろ依代)となる『千ハタ(数多くの幡旗)』『高ハタ(高々と掲げた幡旗)』と弾琴の巫儀によりカミ(神)の招魂が行われた。従い、ハタとは降神の巫儀に必要な呪具である。

 私の感想は、九寨溝・黄龍のチベット自治区を紀行していた時の無数の祈祷旗がはためく光景を回想します。仏教伝来以前から中央アジアから遊牧民のあいだで信仰されていた神の依り代である高く掲げられた風にたなびく巫儀の旗とルーツを共有するのではないだろうか、という思いです。

 記紀神話や先代旧事本紀で登場する神宝の一つである、風にたなびく、スカーフのようなヒレも同種のような気がする。古来、旗を立てるという言葉は志をたて新しい事を始める時に使用するがこれも、神の降臨を願う信仰から来ているのか知れないと思う。戦国時代でも軍は旗を掲げ戦います、これも神の御加護を願う気持ちからなのかも知れない。

 又、日本列島には巨木信仰というものもありトーテム信仰とも呼ばれています。東北から日本海沿岸には縄文時代から続く巨木信仰があります。これも神の降臨、依り代と考えられ旗を高く掲げる行為として合体したのかもしれない。

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