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秦氏に関するメモその2 香春岳と天香山

 承前 秦氏に関するメモその1 『日本にあった朝鮮王国』白水社

 『秦氏の根拠地、香春岳(かわらだけ)について』

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 『豊前国風土記』逸文より

 ・昔、新羅の国の神渡り来りて鹿春(かはる)の郷に住みき。名づけて鹿春の神と曰う。郷の北に峰あり、頂きに沼有り、黄楊(つげ)樹生ひ、又、竜骨あり。第二の峰には銅あり。云々・・

 金達寿氏の調査によれば、福岡県田川郡香春町の「公報かわら」に掲載された江本淡也氏の「渡来人の町香」の文章から以下の結論を述べている。

 ・明治15年の小字名調べから、田川市・郡の彦山地区に「カラクリ」「カラトイワ」「カラウスタニ」「カラガヤ」猪位金地区に「カライケ」「カラハナ」方城地区に「カラノヤマ」「カラサイク」「カラタニ」大任地区に「カラコ」香春地区に「唐土町、唐人池、唐木」勾金地区に「唐川、唐子橋、唐ノ町、唐人原」採銅地区に「カラホゾノ、唐山浦」が存在し、「カラ」「唐」は「加羅(伽耶)」の事だと書く。風土記が出来た頃には加羅(伽耶)の国は滅亡しており新羅の国となっていたので、風土記では新羅の神と記録したと考える。実際、香春神社の祭神は辛国息長大姫大目命で、辛国(韓国=加羅国)の神である事からも実証される。

 中野幡能氏の意見として、地元では香春を「カワラ」と発音し「唐=韓=辛」に通じ、新羅語の『金の村』は「カグポル」と発音するらしい。『日本鉱山総覧』よれば、香春岳からは金・銀・銅・鉛・亜鉛・鉄・石炭が採掘されたそうだ。

 富来隆氏の話では、韓国語のKuri(銅)が香春になったという。(カリ→カル→カアル→カハル)と推測している。『日本書紀』にて『天の香山の金をとりて・・・・』とある記述から香はカグではなくカルではなかったかと推測する。そうすると、豊前の香春(カワル)と同義となる。『古語拾遺』『旧事本紀』では、上記文章が金でなく銅(かね)と書かれている。

 軽・香・刈などがカル・カリの宛て字として用いられた。

 大和岩雄氏は『古事記』の允恭記に軽太子の作った「軽箭」について、「箭の内を銅(あかがね)にせりとあり、軽が銅の意味で使用されている。

 畑井弘氏の研究では、朝鮮語の鉱山を意味する言葉は「カガ」「カグ」「カゴ」と発音されると述べている。

 西田長男氏の意見では天香語山命の名前は「鉱山を指している」と言う。

 大和岩雄氏の結論は、『日本書紀』で「天香山の金を採りて、以って日矛(ひぼこ)を作らしむ」と書くが、『古事記』では天香山を天金山と書き、鉄(かね)を採って鏡を作ったと書く。古代の日本では金・銀・銅・鉄、全てカネと呼んでいた。

 「カネ」から作られた「鏡(カガミ)」の「カガ」は、天香(香吾)山の「カグ」「カゴ」であり、「カグポル」「カハル」と結びついている。香春岳は、「秦王国」のいわば、天香山、天金山と言えると述べる。

 参考 グーグルアース 香春岳(かわらだけ)採銅所

「kawarasaidou.kmz」をダウンロード

 『私の感想・疑問』

 秦氏の本拠地である豊前で本職が鉱工業、即ち銅鉱石の採掘と銅の生産・加工であったとする。香春岳が採銅鉱石場であった。彼らの出身地は洛東江流域の加羅(伽耶)諸国であり高度な製銅・製鉄の技術を持つテクノクラートであった。私が以前より考えていた秦氏の実態とあまり相違はないと思います。

 豊前の秦氏の故郷地名で「唐古」というのが気になります。御存知の通り、纏向遺跡の近くに弥生時代の終わり頃に栄えた巨大な環濠集落である唐古・鍵遺跡というものがあります。今年の1月に遺跡を歩いたが、鏡神社が幾つか存在し、多神社の近くには秦庄が存在しています。唐古・鍵遺跡は秦氏が来朝したと考えられる5世紀前後よりは古い時代の遺跡である。

  弥生時代に日本独特の進化を遂げた銅鐸を製作した技術集団は少なくとも、稲作を伝えた長江流域の人々であるか、洛東江流域の金属精錬技術も持った人々であったと考えられる。稲作の北九州への伝播時期は最新の歴博の炭素14法分析により、従来の時代認識よりは100年は遡る可能性もあり、紀元前の縄文晩期に人々とともに伝播した。

 秦氏は突然に5世紀前後の河内王朝の創生時期から移住して来た訳ではなく、それ以前から大昔の縄文晩期から列島に移住して来ていたと考える方が無理が無いと思う。朝鮮半島の北方からの扶余族の南下や製鉄に関する資源枯渇(材木)の問題が起こり大挙して移住が始まったのが5世紀前後と考えたい。

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