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秦氏に関するメモ その1 『日本にあった朝鮮王国』白水社

 大和岩雄さんの『日本にあった朝鮮王国(謎の秦王国と古代信仰)』を読んでいるので、メモを残したいと思います。本当に丁寧に調べられておられ、出典も正確で、誰の意見なのかも正確に記録されています。優れた貴重な本だと思います。

 秦氏に関しては私も興味があり昔から調べていますので、研究材料の一つとして、この本で書かれた事をメモとして残したいと思います。そして、私の疑問も記録する積りです。

1.前提となる『朝鮮王国』に対する私の疑問

 この本の出発点は聖徳太子の時代に隋の使節として来朝した裴世清の『隋書 倭国伝』に記録された豊前(現在の大分県)に存在したという秦王国の記述から始まります。『隋書 倭国伝』での記述は

 竹斯(つくし)国に至り、又、東して秦王国に至る。其の人華夏に同じ。以って夷洲と為すも、疑うらくは、明らかにする能(あた)はざるなり。又、十余国を経て海岸に達す。竹斯国より以東は、皆倭に附属する。

 大和氏は解説で、華夏は中華であり中国を指す。隋使は秦王国の人々を中国人だと聞き、この国は夷洲(台湾)ではないかと思ったと記録した。しかし、それを確認は出来なかった。直木孝次郎氏は秦王国を豊前とみる説である。かれは、中国と似た風俗を持つ朝鮮系帰化人の事であると述べている。又、泊勝美氏の説は同じく豊前説でありその論拠は大宝2年(703年)の豊前国の戸籍から導いている。

 上三毛郡塔里(秦部66)、上三毛郡加目久也里(秦部26)、仲津郡丁里(秦部239)と秦氏が圧倒しているのが論拠である。『新撰姓氏録』によれば、秦氏は、秦の始皇帝の末裔と称し、漢に滅ぼされたあと、朝鮮半島に逃げ、更に我が国に来たと称している。

 大和氏の意見は5世紀前後、所謂、オキナガタラシヒメ、応神天皇の頃(河内王朝)から百年位の年月をかけて洛東江流域の弁韓・辰韓即ち加羅・伽耶諸国にいた人々が断続的に渡来して来た人々ではないかと結論している。彼らは中華風の風俗を持ち、製鉄、養蚕、織物、等々の特殊な技術を持つテクノクラートの集団ではなかったかと述べる。

 そして何故豊前に拠点を置いたかは彼らの製鉄(製銅)に関する理由である事を次回にご紹介します。豊前の香春岳と奈良盆地の天香山に関する面白い話が展開します。

(私の備忘録)

 朝鮮半島が高句麗・百済・新羅・伽耶(加羅)諸国となる以前の馬韓・弁韓・辰韓の歴史がよく判っていないのが現状ではないだろうか。馬韓は朝鮮半島南西部、弁韓は中央南部の洛東江流域地域、辰韓は南東部と考えられる。

先ず馬韓であるが、最近の栄山江(ヨンサンガン)流域で発見された10基を超える前方後円墳の発掘成果で5世紀末から6世紀の頃の歴史が復元されつつあります。扶余族である百済が南下してきた頃でも依然として馬韓は存続していたのですね。九州の倭人との連携が極めて高かった可能性があります。

 そして彼らの5世紀以前の墓制である甕棺墓を考えると九州地域の倭人と風俗が似ています。東シナ海を行き来した海人であった可能性が高まっています。

 一方、弁韓と辰韓ですが、魏志東夷伝の記述では、相雑居し、衣服・居処相同じ、言語法俗相似る。とあり言葉も風俗も似ており一緒に住んでいるので弁辰とも呼んでいる。そして、国、鉄を出す。韓・濊・倭みな従って之を取る。と記録されている。鉄は洛東江流域地域で砂鉄が多く出土するので、鉄鋌・鉄器は弁韓地域であると考えられる。

 この地域の古代史もよく判っていないが、最近、伽耶諸国時代の古墳が発掘され始め考古学としても古代史復元の作業が始まっている。

 状況証拠だけで考えれば、何故、弁韓諸国で鉄の製造が出来るようになったのかを考えると、燕や秦の時代から始まった中国人による朝鮮半島進出が大きな理由ではなかったのかと考えるのが素直な考えと思う。前漢の時代からは本格的に中国の華僑は楽浪郡や帯方郡に進出したと、考えられ現地の人と交わり殖産を始めたと考えられる。

 私は旅が好きで世界中を旅しているが、中国人の海外進出の気風は凄まじいものがある。これは、旅をして実感する。中国人のDNAではないだろうか。

 鉄を生産する技術や養蚕・織物の技術は国家機密であり簡単には中国から外には出なかった筈である。楽浪郡・帯方郡の植民地政策の中で国の方針で洛東江流域で工業地帯を建設した可能性があると想像する。そして彼らの風俗は中国風であった。それが、秦氏のルーツであるかも知れない。

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