バンコク紀行その13 暁の寺(ワット・アルン)
三島由紀夫の小説、『豊饒の海 第三部 暁の寺』で有名なワット・アルン(正式にはワット・アルン・ラーチャワラーラーム)の訪問です。場所は現在の王朝であるバンコク王朝(チャックリー王朝)の王宮からチャオプラヤー川の対岸であるトンブリー王朝の都であった場所に有ります。アユタヤ王朝は1767年にビルマの侵攻により滅亡しますが、アユタヤの将軍であった華僑出身のタクシーンが新たな王朝であるトンブリー王朝を此処を都として開基した。
(写真は菩提樹と暁の寺 大塔・小塔)
しかし、晩年に精神的な病に罹り、将軍であったラーマ1世に倒され王朝は交代し、チャックリー王朝(バンコク王朝)=現王朝が開かれ、対岸にある現王宮のある場所に都は移動する。『暁の寺院』はアユタヤ時代から存在したようですが、トンブリー王朝を開基し都を此処に開いたタークシン王から本格的に整備が始まったようだ。
現在エメラルド寺院に安置されているバンコク王朝の守護仏であるエメラルド仏は当初、暁の寺院に安置されていたそうだ。その後、ラーマ2世、3世がこの寺院の整備を積極的に行い現在見られる立派な寺院に変貌したという。
中国から輸入した高価な陶磁器をふんだんに仏塔の壁面の装飾用に利用された。まるで、ブルーの陶磁器の須弥山を作り上げたのだ。中央大塔(中央祠堂)は75メータ、基壇部は周囲234メータもあります。中央大塔の周囲には4基の小塔が聳え、まるで、アンコール・ワットと同じ構造をしている。クメールの影響が大きいと思います。
大塔の上にはヒンドゥーの神であるインドラ神が3つの頭を持つ象であるアイラヴァータの上に乗っている。インドラ神は雷を操る天空の神であり、日本では帝釈天と呼ばれる。明らかにヒンドゥー教の寺である。大塔・小塔の壁面にはヒンドゥーの神々が彫刻されている。ガルーダやアプサラ(天女)やデバター(女神)がアンコール・ワットと同じように彫刻されている。
大塔に登れば360度の古の都であるトンブリー、そして対岸のチャックリー王朝(バンコク王朝)の都を一望できるのが素晴らしい。
マイフォト バンコク 暁の寺(ワット・アルン)写真集
帰国後に三島由紀夫の『豊饒の海 第三部 暁の寺』を読みました。舞台は昭和15年の頃のバンコクであり、海抜2メータのバンコクが縦横無尽に掘削された運河で囲まれていた時代です。現在は殆ど東京や大阪と同じように運河は埋められ道路に変貌している。東洋のベニスと呼ばれていた頃でしょうね。
輪廻転生をテーマにした小説だと思いますが、何故、暁の寺が小説の舞台なのか帰国後に考えてみた。小説では、バンコクのあと、ヒンドゥーの聖地であるガンジス川を訪れる訳ですがヒンドゥーの影響が強い寺である『暁の寺』とトンブリー王朝を築き悲劇の最後を遂げたタークシン王に興味があったのではないかと思いました。
寺の名前はラーマ2世が1820年にヒンドゥーの暁の神であるアルーナから『暁の寺』と命名されており、タイでは珍しいヒンドゥー教のお寺であります。大乗仏教に馴染の日本人にはガンダーラからシルクロードを経由し中国で中国文化の影響を受け且つ、朝鮮半島を経由した仏教は、世界的に見れば一面であり、一方では小乗仏教と呼ばれるヒンドゥーの影響が強い仏教も存在するのですね。
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