NHKドラマ 大仏開眼
平城京遷都1300年記念の番組だと思いますが、NHK大阪放送局がドラマ『大仏開眼』を放映した。二回に渡る放送の第1回目の放送であった。残念ながら、今週末はバンコクのアユタヤに滞在しているので、第二回目は観る事が出来ない。
主人公は吉備真備である。彼は門閥も無い身ながら右大臣にまで出世した学者であり、政治家で平安時代の菅原道真の奈良時代版と考えていい。身分制度が厳しい時代に於いてこの二人しか門閥の無い身分から右大臣に出世した人は居ないし、最後は藤原氏に大宰府に左遷されてしまう。境遇が似ているのだ。
真備は阿部仲麻呂や井真成とともに遣唐使船に乗り、唐に留学していた。17年年間も遣唐使船がでていなかったのには、国内の混乱(長屋王の変、等々)と新羅との国交悪化、渤海国と唐との険悪な国際情勢が理由である。遂に渤海国と唐との間で戦争が始まりそうになり、唐の真意を探るべく17年ぶりに多治比広成を大使として遣唐使船を朝鮮半島経由しない東シナ海を直接横断するルートで杭州を目指した。
吉備真備は帰国出来たが、井真成は帰国半年前に病死する。その墓誌が数年前に中国で発見され大きな話題になった。阿倍仲麻呂は玄宗皇帝が許可を下さなかった(既に科挙に受かっており唐王朝の国家公務員の資格だった理由による。)
吉備真備は中国で歴法、音楽、兵学を学び三史五経、名刑算術、陰陽暦道、天文漏剋、秘術雑占、唐礼130巻、等々の書物を持ち帰り朝廷に献上した。ドラマでは帰国する船の中でも大事そうに背負子に担ぐ妙な楽器みたいな物に注目されたと思います。私が分析するに、上段に6枚の金属片、下段に同じく6枚の金属片が取り付けてありました。
ドラマでの説明ではこれは基準音であり、音楽を演奏する時に笛や笙やシチリキや弦楽器はこの基準音に合わせる必要があったと説明していました。私はこれは、大事な事で音楽とは神に捧げるものであり、音階は神の声だったと思います。古来、中国では編鐘(へんしょう)という青銅製の楽器がありました。物干し竿みたいなものに、大きさの異なる銅鐸みたいなものをぶら下げ、叩いて音を出す装置です。
原型は大きさの異なる特殊な石片に穴を開け木琴をぶら下げたようなものがルーツだと思います。中国では古代の編鐘が500以上出土しているといいます、26個、36個とか色々あるようですね。音楽史を勉強している人は詳しいと思います。私はドラマで使用された上段6個、下段6個は『よなぬき』2オクターブの基準と理解しました。第4音階と第7音階が存在しない、ド、レ、ミ、ソ、ラ、ドの『よなぬき』音階ではないでしょうか。
日本では明治時代に西洋音楽が入るまでは『よなぬき』音階であったと理解しています。但し、あまり西洋音階に馴染がなかったので、小学唱歌では日本と同じ、スコットランド民謡の音楽を、多く取り入れたと理解している。今でも、流行歌では『よなぬき』が業界では禁じ手として使用されるケースがあると何処かで聴きました。(笑)
さて、ドラマでは同じく留学僧として帰国した玄昉(げんぼう)と二人の活躍を中心に描いている。どうやら、破壊僧として玄昉を描いていますね。素晴らしい役者が演技をしていて、確か武田信玄の役をしていた人ではないでしょうか。迫力があります。
ところで、遣唐使船の第2船の方は中国に嵐で戻されたが、翌年の736年には無事に帰国した。しかし、737年に天然痘が平城京を襲うのです。どうやら、中国から天然痘を持ち込んだ水人(船夫)が九州に上陸させたのではないでしょうか。九州からヤマトにまで蔓延してしまった。そして、藤原4兄弟が罹病し死んでしまう。藤原氏の衰退である、藤原氏では無い橘諸兄(たちばなのもろえ)が右大臣となり玄昉も真備も朝廷の重要な地位に着く。
当時の世界情勢は唐王朝が巨大な国家を築き周辺諸国は唐に学び追いつけ追い越せの時代でした。国家鎮護の中心は大乗仏教であり法相宗でした、その中心が盧遮那仏です。当時の周辺諸国、例えば新羅国でも雲南の国でも盧遮那仏を建造する計画が同時多発的に起こっていたのですね。日本は新羅から造仏の技術を導入したと考えています。
藤原氏の巻き返しは、九州で藤原広嗣が乱を起こし、聖武天皇は平城京を捨て、橘諸兄の縁の恭仁京・紫香楽に遷都される訳です。そして、紫香楽で大仏造営が始まりました。多分、次回のドラマで描かれると思います。しかし、藤原仲麻呂が聖武天皇の皇后と組み反撃にでます。
以前、京都のMuBlogの浅茅原さんと恭仁京・紫香楽の遺跡を歩きました、どんな気持ちで当時の人々が盧遮那仏を建造しようとしていたのか、思いを馳せた記憶があります。
最終的には藤原仲麻呂が考える平城京に都は戻り、真備も左遷され、大仏は奈良の若草山山麓に建造される事となりました。
参考 平城京の国際情勢
参考 井真成(遣唐留学生)
参考 編鐘関連記事(雲南にて)
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Comments
『大仏開眼』ドラマ
地元奈良の人間といたしましては、ドラマに出てくる場所が、(あっ、知ってる、知ってる!いつ、ロケしてたんやろう~。)で、盛り上がっていました(笑)。
朱雀門や新しく完成した大極殿、それに回廊の場面は、薬師寺で撮影されていました。
4月24日から開催される平城宮跡のイベントに先立ち、ご近所さんには事前公開の案内がありました。
がんばって、取材してきますね。
Posted by: ほかも | 2010.04.07 12:53 PM
お久しぶりです
大極殿について、何回も取材されていましたね。やっと完成したんですね。そのうち、見学に行きたいと思います。
朱雀門も東院庭園も撮影現場だと思いながら観ていました。残念ながら週末は日本に居りません、北海道の娘に録画を頼んでおこうと思います。
大極殿が公開されると、盛り上がりますかね。取材宜しくお願いします。
Posted by: jo | 2010.04.07 01:56 PM