纏向遺跡 大型建物跡発掘速報(続編)
承前 卑弥呼の宮殿発見か
昨日の報道に関して思うところを少し補足したいと思います。今年の3月に発掘された建物から直線上に整然と並ぶ巨大建物の柱跡列を持つ建物跡の発掘は歴史的な発掘になる可能性があると思います。
突然に三輪山山麓に出現した箸墓古墳を盟主とする、巨大な前方後円墳群、所謂、三輪古墳群は強大な権力機関が此処に発生した事を遺跡や遺物が語っています。その場所が纏向遺跡と呼ばれています。弥生時代の遺跡として有名な唐古・鍵遺跡はこの場所から少し低い位置に存在し稲作が早く発達した場所と知られています。
三輪古墳群の北の方角に進むと、渋谷向山古墳、行燈山古墳に代表される柳本古墳群が続き、更に北に進むと西殿塚古墳、東殿塚古墳、中山大塚古墳といった大和(おおやまと)古墳群が連なります。古墳時代初期の巨大前方後円墳が目白押しな場所となっています。
この中で、三輪古墳群が一番時代が古いと考えられその中でも箸墓古墳が最大、最古と考えられています。箸墓古墳の周りには同じく古墳時代初期の石塚、勝山、矢塚、東田大塚といった初期の前方後円墳が集中しています。参考 桜井茶臼山古墳と纏向遺跡紀行
従い、纏向地域が如何に重要であるかが判りますね。そして、今迄、百数十回に渡る纏向地域の発掘がなされて来ました。その成果として古墳時代初期の土器形式の詳細な編年が完成したのです。これは、考古学の大きな成果だったと思います。
土器編年から箸墓古墳は3世紀末から4世紀初頭の築造であると考えられ、魏志倭人伝で述べる卑弥呼の死亡年度の3世紀中葉とは時間軸で合わないのが常識でありました。しかし、歴博では放射性炭素14法とAMS法、そして年輪年代法で確定した古代の木材に含まれる炭素14を測定し較正曲線を作り正確な年代を測定する作業が始まり、今年5月に箸墓古墳は240年~260年に建造であり、卑弥呼の死亡時期と合致すると発表した。
日本考古学協会の研究発表の席に私も参加していたが、学会全体としては議論が始まったばかりである。しかし、弥生時代の始まりを正確に九州北部から四国、瀬戸内海、近畿と考古遺物から放射性炭素14法で時代を確定して行く作業が続いており、100年~500年程度は弥生時代が従来の年代より古い時代にシフトする可能性が検討されている。
(大型建物の配置に関する考察)
直線上に規則正しく4棟の建物が確認されたようですが、これは、今城塚古墳(継体天皇陵墓と研究者なら誰でも認める陵墓)の造り出し部で発見された埴輪祭祀場の構造に似ているという事がこれから研究されると思います。考古学に於いて、古墳の研究は進んでいるが意外と政治の中枢である宮についての研究が進んでいないのが現状です。
現在僅かな手掛かりは、今城塚古墳で発掘された東西65メータ、南北10メータの膨大な埴輪群から推測するしか手はないのではないか。そして、今回の大型建物跡の発掘です。今城塚古墳から出土した兵士、巫女、力士、鶏、その他鳥、建物群、等々の配置や役割から当時の政治形態を分析可能と思われます。
詳しくは高槻市教育委員会発行の『継体天皇の時代 徹底討論 今城塚古墳』を読んで下さい。
(桜井茶臼山古墳の発掘も気になる)
竪穴石室に200キロもの辰砂を使用した磐余の大王の墓との関係が気になります。現在の貨幣価値に置き換えると八億円相当の価値である辰砂を使った大王は誰なのか、気になります。時代は同じく古墳時代初期ですが従来は4世紀初頭だという説ですが、今回の橿考研は放射性炭素14法で正確な年代を来年には発表すると思います。
記紀では神武天皇がヤマト王権の初代王であり名前はイワレ彦、箸墓に眠るのは10代天皇である崇神天皇の時代のヤマトトトビモモソヒメ。記紀では彼女は特に王ではなかったが、巫女として描かれている。
戦後の歴史学、考古学の世界では欠史8代とか記紀を軽んじる風潮がありました、しかし、武寧王稜の発掘で日本書紀が正確である事が証明された。全くの出鱈目を歴史書として書いた訳ではない。 参考過去記事 日本書紀は誰が書いたか
ただ、奈良時代には崇神さんの時代頃の政治形態を認める訳にいかない男性王中心の政治形態だった影響が卑弥呼のような巫女王を許さなかったかもしれない。
それと、記紀を読んでいると男性の神に墳墓は登場しない、女性ばかりである。男の神は『おかくれになる』、何処かに姿を消してしまわれるとあり、墳墓の記述は女性ばかりである。大物主さんも、イザナギさんも、ちゃんとイザナミさんは熊野に埋葬されているのに男神は行方知れずである。どうも墳墓は女性だけが対象になったようなんですね。
ともあれ、来年には桜井茶臼山古墳や纏向遺跡の研究成果発表があると思いますので楽しみに待ちましょう。
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