千葉県印旛村 戸ノ内(とのうち)貝塚 第6次発掘調査現地説明会
9月23日千葉県印旛郡印旛村字師戸戸ノ内にある『戸ノ内貝塚』現場にて、早稲田大学考古学研究室による第6次発掘調査 現地説明会がありました。私も今年の春からお世話になっている高橋龍三郎教授が陣頭指揮されている遺跡なので、興味を持って参加した。先生自ら我々に説明をされた。
説明会には早稲田考古学教室の重鎮の菊池徹夫教授(日本考古学協会会長)も前日、三内丸山遺跡での会議から駆けつけ、エジプト考古学の近藤二郎教授、マヤ文明の寺崎秀一郎助教授も参加されていた。
早稲田隊は2003年から発掘調査を続けており、今回は第6次発掘調査報告となるのですね。現地説明会資料と、当日の説明を元に概要を報告します。
(戸ノ内貝塚とは)
西印旛沼北岸の標高28~29メータの台地上に立地するが、古来このあたりは『師戸(もろと)貝塚』として縄文時代の後期、土器編年で言う「安行式土器」が出土する貝塚として著名だったようですね。何故このような台地上に人々が存在したかは、明らかで7千年前の縄文海進により印旛沼は湾(古鬼怒湾)になっており海面はこの高台近くまで押し寄せていた。
その時の名残りが急な断崖のような地形を形成した。その後、縄文中期の頃から海面は低下し潟が出来て汽水潟(海水と真水が混じる潟)となったようです。大和シジミが繁殖し縄文人の食糧となった。縄文時代後期から晩期にかけて、印旛沼周辺では貝塚遺跡が確認されている。佐倉市井野長割遺跡や佐倉市宮内井戸作遺跡などは大規模遺跡として知られている。 参考 井野長割遺跡 宮内井戸作遺跡
印旛沼周辺地域は縄文時代後期、晩期の集落や社会を研究する上で重要な地域と言える。
早稲田の考古学研究室では2003年度から5次の調査を既に終えている。
参考 第二次発掘調査概要 縄文遺跡のある風景 その3 2007年度現地説明
これまで、後期後葉の土坑群や古墳時代の円墳の周溝の検出や、第4・5次調査では縄文時代晩期前葉の竪穴住居跡の発掘調査や、土偶、耳飾りなどの遺物も出土している。
(第6次発掘調査の概要)
(1)古墳の周溝の発掘
縄文遺跡の密集する土坑群の上に古墳時代に円墳が築かれたようで、その周溝と推測される溝を発掘検出した。幅約1.5メータ、低辺までの深さ約50センチで調査区北東から南西にかけて緩やかにカーブして横走している。調査区域外にあたる北東に約10メータの範囲で同様に弧を描く周溝が調査されている。中央付近で墳丘への入口と想定される場所に溝が途切れブリッジ状にせり上がる箇所も検出した。
古墳の墳丘部や主体部はすでに失われているが、30メータ級の円墳が存在したと考えられる。
(2)縄文時代後期後葉の土坑群の発掘
縄文時代の後期後葉に位置づけられる巨大な土坑が濃密に分布しており、前年度までの発掘では径70センチ内外で深さが2メータを越える比較的細長い土坑が主体であった。今回の調査で径150センチ前後の円筒形の深い土坑が多く発掘されました。これらの土坑は底面に下部施設と考えられる堀り込みを伴うケースが大半であり、中には覆土から後期後葉曽谷式~安行1式に比定される大型の土器破片が出土する。
写真で参照してください、「ピット773」は径2メータ×深さ2.5メータの最大規模の土坑であるが、円筒形に穿たれた穴の底には厚さ2センチの炭化物がレンズ状に層をなして堆積していた。焼土が検出されていなので、何らかの遺棄物が遺存したと考える。遺物は縄文時代後期安行1式の土器片を主体とするが、中期末葉の土器片も多く出している。
調査区南に位置するピット群は複雑に重複しており、出土遺物や土層から短期間のうちに埋没し新しい土坑が穿たれたと想定する。それぞれの土坑遺物は曽谷式~安行1式の土器を主体としている。
現在、これらの大型土坑の機能について断定できる段階ではない、貯蔵穴なのか、掘立柱建物跡なのか、又は、お墓であったのか今後の周辺遺跡の調査と照らして考えて行く。
(写真一覧)
『jo考古調査士(予定)の感想』
一応、学科4科目の単位が取れました。考古調査士の資格を申請する権利は得ることが出来ました。
さて、私の印象は縄文時代晩期にこの印旛潟を見下ろす高台に縄文人の聖なる葬送の場が存在した。血縁で結ばれた幾種類かのグループが墓坑を掘り埋葬した場所と考える。その後、縄文時代が終焉を迎え弥生時代、古墳時代へと時代は移り、この印旛沼を見下ろす縄文から続いた聖なる場所を古墳時代に移植した人々は自分たちの聖なる場所として乗っ取ったと考えられないだろうか。
メキシコのオアハカ谷の遺跡を見学すると、彼らの聖なる場所にスペイン人は教会を建造し地元民を精神的に支配した歴史があります。この場所においてもそのような歴史が存在したのではないかと、夢想しながら遺跡を後にした。
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