第六回 三輪山セミナー そのⅢ(菅野雅雄翁講演録)
古事記研究の第一人者である菅野雅雄さんの講演です。古代史に興味のある人なら誰でも彼の書かれた本は読まれたと思います。さて、今日の講演は『三輪山と神の社 「高い」ということ』であります。以下私が講演を聴いたメモであります。
菅野雅雄翁講演録『三輪山と神の社 「高い」ということ』
出雲大社について
出雲大社は中世に於いて高さ16丈(約48メータ)の高さである事が近年の発掘により証明された事は周知の事実である。13世紀前半に伐採された巨大な柱3本が鉄の輪で締められた柱の根元が発掘された。これにより、出雲国造千家宮司家所蔵の『金輪御造営指図』が本当であった事が証明された。
伝説によれば、古代は32丈(96メータ)の高さであったとも言われている、それ程巨大な神社が出雲には聳えていたのだ。中世に於いて、雲太・和二・京三という言葉が人々により語られていたという。木造建築物で最大は、出雲大社であり、二番目は奈良の大仏殿、三番目が京都の大極殿であります。これは、『口遊(くちずさみ)』巻一 源為憲が書いた公家としての知識を教える手引書に書かれている。
ところで、伊勢神宮は20年毎に式年遷宮が挙行されるが、出雲大社は60年に一度、式年遷宮が行われるそうですね。 参考 出雲大社遷宮
菅野さんはその60年に一度の遷宮に招待された経験があるそうです。御柱を一時仮の場所(お旅所)に移って頂いてる時に昇殿が許されるという。なかなかのいい眺めだったそうですね。 参考過去記事 日本海沿岸の巨木文化
高いということ
古代において、日本人が高い(たかい)という言葉は単に高さを表現しただけでなく、優れている、気高い、高潔、高尚、崇高という意味で使用していたと考えられる。
古事記下巻の仁徳天皇条に於いても、『天皇、高山に登りて、四方の国を見たまひて・・』この高山の解釈も気高いの意味である。
古事記上巻冒頭部分にて、『天地初めて發けし時、高天の原に成れる神の名は、天之御中主神(あめのみなかぬし)。次に、高御産巣日神(たかみむすひのかみ)。次に神産巣日神(かみむすひのかみ)。・…』とありますが、高天の原の高はけだかい、崇高の意味と解釈出来ます。次の神様ですが、最初の神が二番目の神と名前が付く神様より高とつく神様の方が格が高い事を示していますね。高御産巣日神のことです。
万葉集に於いても見つける事が出来ます。山部赤人の不尽の山を望む歌一首から『天地の 分かれし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 布士の高嶺を・・・・』この場合も崇高なという意味で使われている事が判ります。これ以外ににも、万葉集では『高照らす 日の皇子、高光る 日の皇子、高御座 天の日継と・・・・』と類型が登場しています。
三輪山と大神神社(おおみわじんじゃ)
古事記では大国主さんと大物主さんは別の神ととして語られています。大国主さんが一緒に国創りをしていた少彦名の神が常世に去った時に、海上に現れた神が大物主さんであり私を三輪山に祭れと言ったと述べる。これが、大神神社の由緒であります。古事記では『産む、作る、支配する』と三段階に分けて国の歴史を語っているのが特徴だそうだ。
jo君感想
古代に於いて、高いという意味が崇高であるという意味も同時に持っていたという菅野さんのお話は説得力があると思いました。私はこれには山信仰が基盤にあるのではないかと考えています。縄文時代から海洋民族であった日本列島の先祖は遥か海上から山を観て航行していたと思います。船乗りにとり目印の山は命を繋ぐ重要なメルクマールだったと思いますね。
そして、弥生時代になり稲作が伝播し、太陽が山から昇り山に沈むという世界が生まれ奈良盆地では三輪山が太陽が昇る山、二上山(ふたがみやま)が太陽の沈む常世の世界という信仰が生まれたのではないでしょうか。そして、仏教が伝来しても山岳信仰は密教と融合し独自の山伏や山岳信仰が生まれました。
日本人には山が切っても切り離せない存在であり、崇高な世界に変わりはないのではないだろうか。蘇我氏が天皇の御座所よりも高い甘樫の丘に邸宅を建てるから殺された訳ですよね。信長も天皇よりも高い安土の天守閣に住み、配下に天皇の御座所を建築したから、殺された。
魏志倭人伝でも倭国では貴人に道で出会うと、道端により土下座をしたと記録されています。頭の高さは崇高、優れるという価値と同じだったのですね。それは、山信仰から生まれたのではないかと私は考えています。
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