今城塚古墳 ヲホド王(継体天皇)を考える (1)
高槻市教育委員会が2008年7月に吉川弘文館より出版された『継体天皇の時代 徹底討論 今城塚古墳』は最新の研究者による謎の天皇と呼ばれる継体天皇の研究成果が纏められている。6世紀初めに、日本列島では百舌鳥、古市に巨大な前方後円墳を築いていた河内王朝は武烈天皇を最後に崩壊し、応神天皇の五世の孫と呼ばれるヲホド王(継体天皇)が王朝を築いたのです。彼が即位したのは、樟葉という私が生まれ育った招堤村の隣の村であり子供の頃から馴染みの大王でした。
今まで、ブログで多くの彼に関する記事を書きましたが、来月帰省し京都のMu翁と今城塚古墳を訪問するにあたり、再度、最新の継体天皇と今城塚古墳に関する研究者の考えを纏めておくことにした。
(白石太一郎先生の考え)
先生のお話は『六世紀前半の倭国における今城塚古墳』という視点でマクロに捉えようとされています。以下、要点を忘れないように、メモしておきます。
・今城塚古墳が継体天皇の墓であり、6世紀前半である事は誰もが認める事実である。
・奈良時代以前の大王・天皇で奈良盆地の大和川水系と河内以外に陵墓が築かれたのは継体天皇の淀川右岸の摂津の今城塚古墳と天智天皇の山科の陵以外に例がない。
・ヤマト王権が誕生したのは大和川水域であり奈良盆地東南部に限られる。古墳出現期の3世紀には奈良盆地北部にも、葛城にも河内、和泉にも大王級の百メータを越す古墳は存在しない。しかし、淀川水系には摂津の三島に弁天山A一号墳という120メータ級の古墳があり、交野には森一号墳100メータ級の古墳が存在する。そして、山背の乙訓(おとくに)には元稲荷古墳という100メータ級の前方後方墳が存在する。木津川上流に椿井大塚山古墳(jo注:崇神さんと戦争した武埴安の墓だと考えている)がある。
・初期ヤマト王権が成立した頃は大和川水系を中心に大和、河内、和泉が纏まった政治集団であり中心が三輪山山麓であった。しかし、淀川水系では要所要所に有力な古墳が存在し独立した政治集団が存在したと考えられる。
・5世紀中葉に三島に太田茶臼山古墳という巨大な前方後円墳が築かれ、6世紀初頭の継体天皇の今城塚古墳の出現となります。5世紀中葉にはヤマト王権に対して伍する力を持つ勢力に淀川水系の勢力は成長していたと考えられる。
・継体天皇は樟葉で即位しても宮を乙訓、綴喜などに移すが20年間、大和盆地には入る事が出来なかった。これは、明らかに伝統的なヤマト王権の勢力が奈良盆地、河内に存在していた事になり、最後にヤマト王権の故郷であるイワレに迎え入れられます。従い継体天皇以降に畿内は淀川水系を含んだ摂津、山背を含んだ領域となったと考えられる。
・6世紀前半に継体天皇を支えたと考えられる巨大古墳が列島に存在する。北九州の筑紫の磐井の墓と考えられる全長140メータ級の前方後円墳の岩戸山古墳である。福岡県 南部の八女市にありますね。筑紫の君の磐井は継体天皇即位に味方した勢力と考えられ、生前に巨大な前方後円墳を建造する事を許されていた。その後、継体天皇と戦争する訳ですが、戦争に負けて巨大古墳が建造できませんね。
・関東方面でも稲荷山鉄剣を出土した、さきたま古墳群の稲荷古墳の傍に6世紀初頭の全長140メータを越える二子山古墳があります。そして、群馬県の西の現在の藤岡市に白 石古墳群というのがあり、その中に七輿山(ななこしやま)古墳という6世紀初頭の150メータ級の前方後円墳が存在します。当時の上毛野(かみつけの)と呼ばれた地域の首長墓と考えられます。
グーグルアース 七輿山古墳
・継体天皇即位に味方したと考えられる尾張の勢力があります。名古屋市の断夫山(だんぷさん)古墳という熱田神宮のすぐ傍にある150メータ級の巨大前方後円墳は6世紀初頭に築かれている。継体天皇の妃の一人に尾張連草香の娘、目子媛(めのこひめ)という人がいましたね。彼女は安閑天皇や宣化天皇を産みます。この古墳には父親の草香と一緒に埋葬されていると考えられます。
参考 断夫山(だんぷさん)古墳グーグルアース
・埋葬施設について今城塚古墳と関東の古墳との間に相似性が見出せるという話があります。今城塚古墳の埋葬施設には石積が墳丘の中に埋め込まれており、従来の墳墓建設時に竪穴を掘って埋葬設備を建設したのではなく、最初に石積みで埋葬設備を作りその上に墳丘を積み上げた工法ではないかと考えている。今城塚と関東の、例えば群馬県前橋市の前二子(まえふたご)古墳という6世紀前半の古墳の横穴式石室と工法が似ている。
・結論として、継体天皇擁立には淀川水系の三島の勢力と尾張、関東の勢力、そして筑紫の君も重要な役割を果たしたのではないかと考える。
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