文化財の保存と活用 あれこれ(2)
文化財の保存と活用 あれこれ(2)
1. 文化財の捉え方
・ 日本国民の財産である文化財には、東アジアとりわけ、歴史上関係の深い中国・韓国の文化・文明の影響を受けたものが数多く存在する。そういう意味で、国民の財産としての日本の文化財は東アジアの人々との共有の文化財でもある訳です。
・ 文化・文明というのは異なる文化・文明が衝突するところで新しいものが生まれると理解している。日本に存在する文化財の多くは過去も、今後も海外の異質な文化・文明と出会う事で世界的に新しいものを、我々の祖先は生み出してきた。
・ 日本人は新しい海外の文化・文明と遭遇すると物まねではなく、そこに新しい文化・文明を創造した事を誇りに感じています。例えば、古墳時代には中国の神仙思想を受け入れながら、新しい縄文時代から続くアニミズムの上に古神道を創造したし、漢字との遭遇からは、やまと言葉を表現できる『かな』や『カタカナ』を発明し漢字と混用する事で、日本語の独自体系を創造し、日本の素晴らしい文化・文明を創造した。
・ 一方、現在の時代と今後の日本の行く末を考えると経済的にも政治的にもアジアとの友好な関係を今まで以上に樹立しなければ日本の豊かな未来はない。その時に、我々の先祖が残してくれた、中国・朝鮮半島そしてアジアの諸国の文化・文明と出会い日本独自の世界に誇る文化財を作り上げた歴史はアジアの人々とのこれからの、交流に於いて重要な相互に理解し合える貴重な共通の媒介物としての役割を持つと考えている。これが、文化財の活用の一つの方向ではないでしょうか。
・ そこで、私が提案したい文化財の保存と活用について幾つかをご紹介します。
2.文化財の活用
① 中国・韓国を中心にアジアの小学生・中学生・高校生との交流
・ 卒業旅行・夏休み・冬休み・ホームステイ制度・子供文化交流シンポジウム等々あらゆる機会を作り、彼らを日本に受け入れ日本の文化財について現地見学・説明・文化文明交流史を語り合い如何にして素晴らしい日本の文化・文明が創造されたかを参考にして貰う。
・ 郷土資料館・歴史資料館・博物館・等々に於いては少なくとも、英語・中国語・韓国語の説明資料は必要と考えます。幸い、最近は日本の交通機関では英語・中国語・韓国語での表記がされている。
・ 例えば、飛鳥寺は韓国の百済時代の王興寺の影響が強いと最新の発掘成果で判りました、日韓の子供たちで相互に両寺の勉強を行い相互の寺の歴史資料を翻訳し合うのは如何でしょうか。専門の学者だけが交流するのでは底辺が拡大しない。日韓の間には困難な教科書問題の壁はこのような子供たちの共同作業から相互に理解を深め未来の彼らに、壁を打ち破って欲しい。
② 遺跡の観光客へのグローバルな対応
・ 今後、日本が文化財を中心に文化レベルの高い観光立国を推し進めるのであれば、今まで以上に外国人観光客へのきめ細かなサポートが必要と考える。
・ 例えば、『埼玉古墳群』と『さきたま史跡博物館』を例にとり私の提案を述べさせて頂きます。
・ 先ず、バス停を降りても行き先案内が存在しない。これでは、外国人どころか日本人も迷子になる。行き先案内を外国語を含めて用意して欲しいと思います。
・ 携帯電話もしくは、携帯用の古墳解説端末を設置して欲しい。海外の遺跡を訪問すると、インフォメーションセンターで無線で解説を聞ける端末を貸してくれる所があります。勿論、有料ですが、微弱電波を使い遺跡や遺物の前に立つと解説が流れる仕組みですね。現在のハイテクを使用するなら、携帯電話のワンセグチャネルか微弱電波を利用した案内が出来る筈ですね。ワンセグ動画を使用すれば、稲荷山古墳の後円部で動画で鉄剣の発掘状況や、ヤマト王権の雄略大王との関係を生々しく勉強できますよね。通信基地は『さきたま史跡博物館』のサーバが担当すれば良い。
・ この微弱電波を利用した携帯電話の利用は最近、都市のデパートや商店街での顧客勧誘にも利用されていますね。
③ 資料の公開と日本各地の資料館・博物館間・教育委員会のデータベース共用
・ 各地の教育委員会や考古学研究機関、大学関係が保持する遺跡の発掘資料は公開されているが、依然として紙媒体であるものが多いのではないでしょうか。
・ これでは、幅広く市民や海外の人々で文化財に興味のある人には情報が届かないと思います。過去の発掘資料のダイジェスト版だけでも、誰でもアクセス出来る電子空間に展開すべきではないかと考えます。国民の税金で発掘した成果を幅広く国民に開放するのは当たり前の事であると考える。しかも、文化財は国民の共有の財産であり、一部の研究者の財産では無い。
・ 時折、資料館や博物館で写真の撮影も禁止されている所があります。私は、可能な限り許可を貰い写真撮影をさせて貰っています。(勿論文化財保護の為にフラッシュは禁止です)しかし、私が公開しているブログには掲載が許されないケースが多いですね。何故、そのような仕組みになっているのか今でもその理由が理解出来ないでいます。
・ 今後の観光資源としてだけでなく、世界の人々に日本の文化・文明を理解して貰う姿勢が感じ取れないのです。
④ 文化財のデジタルアーカイブ化が進んでいない
・ 以前に富士通に勤務していた頃、文化財のデジタルアーカイブ推進の仕事をしていた経験があります。何時かは消え去る危険のある文化財をデジタル空間に詳細に正確に記録を残す国家プロジェクトであったと記憶しています。
・ 最新のコンピュータ技術を駆使し正確に三次元映像やCG化した記録を残す事で失われてゆく文化財を後世に残す事が可能と考えています。
・ 高松塚壁画やキトラ古墳の壁画、発掘により破壊される遺構や遺跡の映像や三次元映像とCG化された記録は後世の人々に役に立つと考えています。
・ 土器の記録をとる作業の実習を大学で学びましたが、人間の手で土器をさわり古代の人々の心を図面に残す作業の重要性は理解できました。白川静先生が甲骨文字を書き写している作業で古代の人々の心に迫る事ができたという話に似ていますね。最新のコンピュータ技術で土器を回転させながら、レーザ光を使い三次元画像を作るのとは違います。しかし、両方が必要ではないかと思います。
⑤ 自然遺産に思う
・ 文化財保護法に於ける記念物に分類される、特に自然遺産について最近考えるところを記述します。
・ 先日のニュースでは屋久島に観光客が押し寄せ、自然破壊が進んでおり、入場制限の必要性が話題になっていますね。私はその必要は当然だと考えています。ニュージランドのミルフォードトラックでも、ヨセミテでも世界中の自然遺産ではそのような処置が取られています。
・ 日本人は縄文の時代から自然と共生する生き方と自然信仰を続けて来た民族であると誇りに思っています。船を建造したり都市作りにレバノンスギを切り倒し禿山にしたり、水田耕作の為に森を全て消失させた国とは異なります。今どき流行りのエコなどは古代から綿綿と続けて来た歴史を持っています。私は、海外から訪れる観光客に対して日本人の古来からの自然を大事にする心を是非発信すべきではないかと考えます。
・ 里山の考えや、水田と水路の関係、人々の暮らしと漁労・農耕・鉱工業・ありとあらゆる生活の分野と自然との関わりに関して、日本人の先祖から伝えられた知恵と行動の記録を海外から来られた観光客の人々に伝える義務があるように思います。
・ 豊かな温帯モンスーンに恵まれた環境ではありますが、亜寒帯の北の礼文島から
亜熱帯の西表島に連なる島々の人々と自然との関わりについて、各地の自然遺産地域では如何に自然と人間が関わって来たかを広く人々に伝えて行きたい。
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