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感謝の会 至弘さん

私が長年お世話になった会社では、古(いにしえ)より感謝の会というのが風習として存在する。
停年退職されると、その先輩に世話になった人々が集まり、感謝の言葉を述べ記念品を贈呈し、花束を渡し、見送る。

綿綿と続いてきた行事である。確かにサラリーマン生活とは、自分の能力だけでは、何も出来ないのであり、引き立ててくれる先輩が存在し、言うことを聴く部下がいて、連携してくれる同僚がいて、はじめて仕事は出来るのだ。

昨夜は、昔、Townsのプロジェクト時代に世話になった佐藤至弘先輩の感謝の会であった。東京グランドホテルの一室で昔から世話になった連中が集まり、感謝の会が挙行された。昔、懐かしい面々ばかりであった。

(至弘さんとの戦い)

私は米国から帰国し、パソコンの事業部を実質掌握されていた古河さんの配下に戻ったが、そのうち、Townsのアプリケーションを開発しろとの、命令が下り、至弘さんの一家に草鞋を脱いだ。軍命は米国でTownsのアプリケーションを開発しろ!であった。

直接の上司は落合氏であったが、彼は国内のソフトメーカさんを直接対応されており、私は米国専任で大命を任された。至弘さんは軍資金の調達と責任は私が取る、君は全力で米国のソフトメーカさんを説得しTownsのアプリケーションを世界のレベルにしろ!そんな、親分肌の親爺でした。

当時未だ20代半ばのトム・ランドルフ君と出会いサンフランシスコに会社を作り、本格的な米国へのTownsの陸揚げと米国ソフトハウスの経営者・技術者への熱いTownsの設計思想を説いてまわった。

未だ、Townsが国内で出荷される前の1987年頃であったと思う。未だ世界ではマルチメデイア・パソコンが登場する以前のエキサイテイングなパソコンはフロンテイア精神のある米国のソフト開発者に多くの賞賛を受けた。

無我夢中で過した数年間は、それまで米国駐在時代に築いたソフトハウスさんの人々を総動員し、男前の技術屋青年であるトム君の頑張りもあり、世界初の多くの優れたソフトが米国で開発されることとなった。

(至弘さんとの別れ)

米国である機種の製品を事業化しなさいと命令が出た。私とトム君は1ヶ月の時間をかけ西海岸を中心に徹底的なマーケテイングをそれこそ、寝ずにやった。子供達をホテルの一室に招き製品のプロトを並べ遊んでもらう、それを、数台のビデイオカメラで撮影し、あらゆる角度で分析した。

販売チャネルの人々との交渉、ソフトハウスの人々との交渉、ありとあらゆる手段は尽した。トムと私は報告書を作成し、最後に至弘大将をサンフランシスコに来ていただき、最後の裁断を頂く事となった。

トムも私も本来は米国で新しい事業を開始したかったし、攻撃的な性癖の二人である、しかし、冷静に考えると現在考えられている製品では成功する確率はゼロ%であり、膨大な事業赤字を被ると判断した。

至弘さんは私達の報告を聴き、最後に、20分程、一人にさせてくれと言われた。

日本帰国後、私は全ての管理職の職を解かれ、至弘さんは大阪に転勤となった。

今でも、会社としてのあの時の判断は間違っていなかったと思う。しかし、大事な先輩のサラリーマンとしての立場をある意味で厳しいものにしたという、負い目は今でも有ります。

しかし、至弘さんは富士通総研の社長に就任され、経済研究所を創設し、日銀総裁まで送り出すことをされた。

伊豆高原にある、温泉の出る別荘に招待され語りあかした昔、そして、米国の技術者を自宅に招待しての宴会と未来を彼等と語った楽しい記憶しか今は残っていない。


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Comments

Joさん、こんにちは。私のエントリにコメントをいただき、ありがとうございました。こちらにコメント返しをしておりますー。

http://www.atrec.net/metal/diary/0507251745.html

ゆっくり昔話がしたいですね。

Posted by: metal | 2005.07.25 09:44 PM

メタルの旦那

今度、ふうてん老師も一緒にゆっくり杯を傾けましょう。

素晴らしい、人々と遭遇できたのが幸せです。

昨日は中原先輩の前夜祭に出かけました、霊南坂教会でした、弔事の加藤栄護先輩の語りには感動して涙が止まらなかったです。

素晴らしい、人々がいたんやね。え?今も?そうやね、居ますね。

Posted by: jo | 2005.07.25 10:01 PM

はい。ぜひ、ふうてんさんともご一緒させてください!
もう2年くらい前になるかもしれませんが、ふうてんさんと待ち合わせをして、思いっきりすっぽかしてしまったことがあり、ふうてんさんに「キミはやっぱりヘビメタや」と言われたことがありました。

Posted by: metal | 2005.07.26 01:04 PM

ヘビメタの旦那

その時の話は既にうかがっております。今度、のんびりビールでも飲みながら宴会しましょう。

楽しみにしています。

Posted by: jo | 2005.07.26 09:46 PM

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