敵前回頭 日本海
司馬さんは戦闘模様を描かないので有名ですね、戦争の悲惨さを自分のポンコツ戦車隊から身にしみて感じておられた博識であると思う。しかし、”坂の上の雲”では日本海海戦の模様を詳細に描かれた。
(丁字戦法)
ロシア艦隊は対馬海峡を北上している、沖ノ島の近くである旗艦スワロフを先頭に縦2列の変則隊列。日本の連合艦隊は旗艦三笠を先頭に南下する。私は何時も不思議なのは一番偉い人が先頭に立ち、一番危険な部署に位置する海軍の世界共通の戦い方である。
陸の戦い方は大将は安全な後方にいる、それに対して海軍は大将が何時も先頭で最初に砲弾を浴びる場所にいる。海の戦いは陸の戦い方とは根本的に異なると思う。これには理由があると思う、今後、秋山真之が勉強したように歴史上の海戦を勉強する必要がありますね。
敵距離8千メートルで東郷司令長官が発した言葉は”取り舵一杯”です、左に旋回する指示ですね、面舵は右旋回の海人族の言葉です。これが、西洋人が言う”アルファー運動”であり日本人は丁字戦法と呼ぶ。この戦法の欠点は鶴翼の陣形が出来る迄無防備状態が暫くかかる、且つ先頭の旗艦が相手の集中砲火を浴びる欠点がある。
しかし、利点は戦形が整うと艦隊全砲塔を相手の旗艦に向けて集中砲火を浴びせる事が出来る。肉を切らせて骨を切る危険な戦法です。東郷さんは薩摩の示現流です、唐竹割りという真っ直ぐ上に構えた剣を全体重をかけて上段から切り下ろし、自らは傷を負うが相手を必ず仕留める剣法です。
全滅しても良い、しかしバルチック艦隊の一隻でもウラジオストックには入れない相打ちの戦い方でした。その為には司令長官の旗艦が火達磨になる、そんな覚悟が距離8千メートルの距離迄戦法を決めなかった心の動きと思います。
理由は、北上する艦隊とすれ違いで従来通りの戦いをすれば、連合艦隊は相手を追尾する戦いになる訳ですね。秋山真之が考えに考えた7段戦法は約が立ちませんでした、結局は司令長官の東郷が一人で決めた。
(連合艦隊解散の辞)
司馬さんが最後で紹介したのは、”連合艦隊解散の辞”の名文である。米国のルーズベルトは全文を翻訳させて陸海軍の全員に配布したほど感銘を受けた。最後の文章は以下の通リだそうです。
神明はただ平素の鍛錬につとめ、戦はずしてすでに勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足して治平にやすんずる者よりただちにこれを奪う。古人曰く、勝つて兜の緒をしめよ、と。
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Comments
Joさん
解説上手やね。
司馬遼太郎さんに匹敵するで。
T字戦法、久しぶりにクリアに分かりました。
坂之上の雲を読書中は理解していたのに、何年か経つとおぼろ。
しかし、この解説でMuはT字戦法を理解しました。
敵に横腹をさらすことでもあるのやね。
うむ。
相当に気力がいるな。まさしく、乾坤一擲の作戦。
武人は、胆力、そして「意志」、そしてイメージが必要ですね。
乗り切れるイメージが湧かないと、こういう決断は出来なかっただろうな。意表をつく決断。二度目は許されない。
うむ。
冷や汗がでますよ。
Posted by: Mu | 2004.11.23 06:11 AM
Muさん
私は、最初から東郷長官はこの戦法で戦うことを一人で決め手いたと思います、しかし誰にも言わない。戦いは一瞬の判断で決まる、ものであり事前に漏らすと人間恐怖心を持って尻込みする奴が必ずでる。
信長の桶狭間の急襲作戦も義経の崖落しの作戦も一瞬に全力を集中する戦法である。
この日本海海戦で学んだ組織論としては、東郷長官が間違った判断をした時の、第二戦隊の旗艦、出雲の上村長官と佐藤参謀の軍規違反の行動である。
これについては、後日記事を書きます、大変重要な事件であり日本の海軍の組織が如何に”健全”であったかの証明です。
Posted by: jo | 2004.11.23 09:03 AM
はじめまして。≪ココログ≫をうろついていてやってまいりましたユダと申します。
軍の組織、戦略や戦術を現代の組織や経営に照らし合わせて考えるというのは面白いですね。
海軍では戦場での一瞬の判断の誤りが目的を逸する(勝機を逃がす)事になりかねないので、とっさの判断力や行動力に重きが置かれていたようです。
指揮官から水兵まで上下一体なのは、結束が緩むと“フネ”が沈む、すなわち一人が勝手な行動をとると、全員が命の危険に曝される事を熟知していたからです。
勝利(利益)を勝ち取ってはじめて組織(企業)が生きる道が開ける。
そのためには個人の名声や出世しか考えていない“スタンドプレー”はご法度です。
組織の中の派閥抗争や、他人の足を引っ張る事しか考えず、全体の目的を見失っては組織自体が瓦解することをわかっていない組織人が多いのではないでしょうか?
Posted by: ユダ | 2004.11.23 12:58 PM
ユダさま コメント有難うございます。
私は軍の組織および軍事については素人であり素養も有りません。
しかし、過去の軍の組織と戦法については企業経営で参考になると考えております。
スポーツでもそうではないでしょうか?私はラグビーの平尾さんが何時も口にされる言葉が好きです。
One for all, All for one.
多少の山登りの経験がありますが、パーテイの考えも同じですね、一人でも落伍者がでるとパーテイは成り立ちません、企業も同じであると考えています。
これからも宜しく。
Posted by: jo | 2004.11.23 01:48 PM